Love Step

助け

峻は自宅に向かって車を走らせていたが、家の周りに記者たちが集まっているのを見てそのまま素通りした。


俯いている杏梨は気づかない。



どこへ行こうか……。



「お前のマンションへ行っていいか?」


「あ……カギがない」


何も持たずに店を出てしまったことに今気づいた。



ゆきちゃん、追いかけてきてくれなかった……。



雪哉に疑われた事が擦りむいた手と足の痛みより、心が痛かった。


思い出すと、再び涙が出てきて頬を伝わり擦りむいた手に落ちた。


その途端にピリピリとした痛みが走る。



泣く杏梨を横目に見て何があったのか喉まででかかった。



いや、落ち着くまで待とう。

どこへ行けばいいか……。



ふと、姉の友人の真緒の店を思い出した。





「……ここはどこ?」


車から降りた杏梨は不安そうな目を峻に向けた。


泣いたせいで目が真っ赤だ。


だがそんな顔も可愛いと思ってしまう峻だった。


「知り合いのクラブ」


階段を上がってドアを押した。


まだ早い時間だから開いていないかもと思ったが、ドアは開き峻はホッとした。


「開店時間はまだ――」


入って来た峻を見て言葉が止まる。



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