Love Step
「あら?峻、どうしたの?彩は来ていないわよ?」


峻の後ろに隠れるように立っている女の子を見て、片方の眉を上げてみせる。


「デートの途中?」


真緒はにっこり笑って聞く。


「え?いいえ……救急箱を貸してもらえますか?」


「いいわよ そんなところに突っ立っていないで中へ入りなさいよ」


真緒は手を振って言った。


「すみません 杏梨、来いよ」




ふ~ん 杏梨ちゃんって言うの。

カワイイコね。

今まで峻が付き合った子と雰囲気が違うわね。



真緒は奥へ行き救急箱を取ってくるとテーブルの上に置いた。


「ありがとうございます」


峻は真緒にお礼を言い、隣に座らせた杏梨の手のひらに消毒液を沁み込ませた脱脂綿で拭き始めた。


「っ!」


痛みを堪えて大きく息を吸った杏梨に峻の手が止まる。


「ご、ごめん」


慌てて謝る峻だ。


なるべく痛くないように傷口を拭いているのだが、それでもかなり沁みるようで気の毒になった。


そんな峻を見て真緒はこの女の子の事が好きなんだなと感じた。


気遣う峻にクスリと真緒は笑う。


「峻、痛がってもちゃんと消毒しないと治らないわよ?」


対面で笑みを漏らしながら言った真緒だった。



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