Love Step
杏梨は飲み物でも入れようとグラスを出そうとした。



グラスの前にカップがある。



「あっ!」



カップをどかそうと持った時、左手からするっと滑り落ちて床に落ちた。



ゴトッ!



「だ、だいじょうーぶ!?」



グラスだったら割れていた所だが、カップだったので割れるのはまぬがれた。



「いいよ、私がやるから 杏梨は向こうで座っていなさい」



カップを拾った香澄が言う。



邪魔にならないように杏梨はリビングのソファーに座った。



右手のギプスをじっと見つめる。



早く取れないかな……。



「はい お待たせ~」



杏梨の前にコーラの入ったカップを置く。



「カップ?」



なんでだろうと首をかしげ香澄を見る。



「だってグラスだと落とした時に大変でしょ?」



「あ、うん」



「さっきから気になっているのはこれの事でしょ?」



きれいにネイルされた手をひらひらさせる。



「腕は確かだよね」



「腕はって事は、何かあったの?」



気になる言い方だ。



「あったと言うか、あそこで馴染んでないみたいな感じだった 私には優しくしてくれたよ?話も楽しかった」



「うん 優しいよね でも馴染んでいないみたいって?」



「やっぱりスタッフと問題があるみたい  やってくれている最中、電話が鳴ったの 手が離せなくて電話に出れないのに他のスタッフが取ってくれなかったみたい あとで近くを通ったスタッフの所にわざわざ行って「電話に出て」って言ったみたい そうしたら言い合いになって男性が来て仲裁してた」



「そうなんだ……」



「ヘアーサロンのスタッフにのけ者にされているみたいだから、防衛線を張らざるおえないのかなって」



香澄の言葉に杏梨は頷いた。



ヘアーサロンのスタッフと仲良くなれれば良いのに……。



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