Love Step
撮影所の隅に設置された休憩場で峻は苦々しい思いで週刊誌を読んでいた。



また記事が出ている。


ガキンチョは大丈夫だろうか?学校へは行けているか?



杏梨の事が心配になる峻だった。



気持ちを吹っ切る為に杏梨の事はガキンチョと呼ぶ事にしている。



「しゅ~ん♪ 何読んでるのぉ?」



両手を後ろに組みながら弾むように近づいてきたのは梨沙だ。



今日は初めて一緒の撮影で気持ちがウキウキしている。



それが表情や行動にも出ていてカメラマンやスタッフに褒められ、気分は上々といった梨沙だ。



峻の見ている週刊誌を覗き込むと、梨沙の表情が一瞬でこわばる。



峻はまだあの子のこと……気になるんだ。



「これって、海浜公園で会った人でしょ?」



客の髪の毛を施術している写真が大きく出ていて、梨沙は指を指した。



「ああ」



「この人の雰囲気って梨沙好みじゃないけれど、すごいよね~ 数々の浮名を流して え~っと……現代の光源氏?婚約者を長い年月で自分の好みの女にした――」



梨沙が記事を読み上げていると週刊誌を閉じられてしまった。



「峻っ?」



「こんな記事鵜呑みにするなよ」



確かに女優の美咲さんと付き合っていたのは本当だけど、姉貴がモーションかけてもなびかなかったんだ。他のモデルや女優の話が出ているけれど本当かどうかわからない。

これってモテる男の代償なのか?



「え?う、うん」



眉間に皺を寄せた峻に言われて梨沙は戸惑いの返事を返した。



「お~い お2人さん!準備して」


スタッフが2人を呼んだ。



峻はテーブルに週刊誌を放り投げると呼ばれたスタッフの元へ向かった。



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