Love Step

ショッピング

杏梨は頑固だな。


「一緒に外で食べてから服を見に行こう 俺の心配はしないでいいんだ それにここで休んでいると捕まるからね」


軽くウインクされて杏梨の胸がトクンと跳ねた。


もう……様になりすぎているよ……。


杏梨はにっこり笑って頷いた。



明日の事を考えるだけで顔がにやけてしまう。


ゆきちゃんと外に出かけるのは久しぶり。


帰りの車の中は行きの落ち込んだ杏梨ではなく、生き生きとした杏梨に変わっていた。




翌朝、目が覚めて時計を見る。


時計の針は9時10分をさしている。


「やだ!寝坊しちゃった!」


そうだ!ゆきちゃん!


まだ眠っているのでは?と心配で雪哉の部屋に急ぐ。


「ゆきちゃん!」


バタンと音をたててドアが開く。


部屋に雪哉はいなかった。


「ゆきちゃん……」


部屋にいなくてホッともしたが、寂しい気持ちもあった。


リビングに行くとダイニングテーブルの上にセッティングされた朝食が目に入る。


メモが見えて手に取った。


おはよう 杏梨
ぐっすり眠っていたから起こさずに出かけるよ。
11時に店に来て欲しい   雪哉


たったそれだけの短い文だったが杏梨は嬉しかった。


ゆきちゃんって字もきれいなんだよね……。

書道も確かすごい段を持っていたはず。


テーブルの上にはスクランブルエッグとグリーンサラダ。


昨日、店の帰りに寄ったスーパーで買ったクロワッサンもある。


杏梨はキッチンに入りインスタントのカフェオレを作ると食べ始めた。


食べながらも頬に触れる髪がくすぐったい。


昨日、ゆきちゃんに髪を触られても怖くなかった。

男性恐怖症が消えたのかな……わたし。



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