空白の玉座


議会を終え、クラリスが部屋に戻ると、入り口にいた彼の部下であるゲイツが頭を下げた。

小声で「ノイン様がお越しです」と告げる。その言葉にクラリスは顔をしかめた。

執務室として使用している部屋は食事の場所も兼ねている為、
長いテーブルとその大きさに見合った数脚の椅子が並べられ、奥には低めのテーブル、長椅子が置かれていた。

その長椅子に紫のドレスに身を包んだノインが体を横たえている。

体のラインがはっきりわかるドレスに、太股まで入ったスリットが肘掛に投げ出された肢体を妖艶に見せていた。

「あら、おかえり」

綺麗に結われた黒髪が彼女の色の白さを惹きたてている。
もうすぐ40を迎える女性には見えなかった。

「許可なく留守中に部屋に入らないでもらいたい」

「親が子供の部屋に入るのに許可がいるってのかい?」

赤く彩られた唇からノインは笑いを漏らした。




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