空白の玉座


「王の後宮に入れるおつもりですか」

後ろに控えていたゲイツが言う。
クラリスは椅子にもたれ果実酒に口をつけた。

「話がわかるな。どこかの貴族を後見人につければ容易いことだ」

「それで金髪ですか」

「目立つほどいい…」



――――王を殺すんだからな



端正な顔に薄い笑みを浮かべクラリスが頭に描いた言葉を、ゲイツも理解していた。

目立つ刺客であればある程、犯人に意識がいきやすい。


奥の部屋のカーテンが開き、女官が顔を出した。
その後ろから頼りない足取りで少女がついてくる。

目の前に現れたルシアの姿に、思わずクラリスは椅子に沈んでいた体を起こした。

瞳と同じアイスブルーの薄い布のドレスに身を包み、白く透き通るような肌はより一層綺麗に映る。

汚れを落とした金色の髪は先程よりもより艶やかで、ふわふわと少女の動きに合わせて揺れていた。






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