空白の玉座
少女が黙っていると、急かすように店主がまた棒で突付く。
「さっさと答えろ!」
その店主を射抜くような瞳でクラリスは見た。
「おい。商品に傷をつけたら値を下げるんだろうな」
低い、威圧感のある声に店主は目を丸くして慌てて棒を檻から引き抜いた。
2人のやり取りを見ていた少女はやがてゆっくりと口を開く。
「………ルシアです」
答えを聞くと、クラリスは隣にいたゲイツに「買え」と声をかけた。
そうして、正規の市場で買った荷物に混ぜて少女を部屋へと運び、外に出された少女は綺麗な調度品の揃う部屋を見て呆然としていた。
キョロキョロと目と頭が忙しなく動く。その都度柔らかい髪がふわふわと揺れた。
「お呼びですか」
入り口の大きい扉が開き女官が二人顔を出す。
「こいつを綺麗にしてやれ」
顎で示すと、女官達は混乱したままのルシアを湯殿へ導いた。