空白の玉座
部屋に通されると、手前にゴルドアが跪き、奥の一段高くなった場所に置かれた椅子に王妃アメリアが座していた。
丁寧に織られた華やかな絨毯、花の形を真似た小さめのシャンデリアのあるその部屋は、
謁見の間として使用されているのでアメリアが座る椅子以外の家具は置かれていなかった。
ジェイスはアメリアから少し離れた場所に跪く。隣のセシもそれに倣った。
鮮やかなエメラルドグリーの瞳に、無造作に下ろされたオレンジ色の腰くらいまである長い髪、
薄いグリーンのドレスを着たアメリアは花のように美しい。
前王妃の病死後、正妃として嫁いできたアメリアはユリウスとは20ほど歳が離れていた。
政略結婚に加え、慣れない風土や慣習の中でも笑顔を失わずに凛としている姿はいつ見ても綺麗だとジェイスは思った。
ちょうどジェイスが親衛隊に入隊した年にアメリアが嫁いできたこともあり、お互いにとって慣れない王宮で良き話し相手でもあった。