空白の玉座
ジェイスは生まれてすぐに母を病で亡くし、男で一つで育ててくれていた父を戦争で亡くした。
ジェイスの父と親衛隊の仲間であったゴルドアは、孤児になってしまったジェイスを引き取り息子としてセシと一緒に育てる事にしたのだ。
突然現れたジェイスをセシは素直に兄と呼べなかった。
天涯孤独になったジェイスを思いやる事よりも、ジェイスを構う両親を彼にとられたという気持ちのほうが上回って、一方的なケンカばかりした。
その頃に比べればずいぶん大人になったつもりだが、急に態度を変える事も出来ずに、またケンカをしたらジェイスが家を出てしまった。
ゴルドアに怒られ、思いもよらないことにセシも反省したものの、素直に謝れない。
それなのに、すれ違う人は皆自分がジェイスの弟だと知っている。
その事がさらにセシの心を苦しくさせた。