空白の玉座



「そこで何をしている!」

野太い声に驚いて振り返ると、体の大きい兵士が立っていた。

「ここは許可のある者以外立ち入り禁止だぞ」

男は言いながら、セシが着ている親衛隊の制服に気付いたようだった。

「親衛隊がクラリス様の居館に何の用だ?」

「あの、アメリア様の部屋に行きたくて」

「それならこっちだ」

導くようにして歩きだした兵士の背を見ながら、セシはテラスを振り返った。

クラリスの名前はよく知っていた。ジェイスの話によく出てくるから。

てことは、彼女はお妃にあたる人だったんだろうか。

悲しげな横顔だけが、妙に頭に残っていた。





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