かわいそうに…
「幸いにもその青年はすぐに警察に捕まったそうですけど…」

「どこが幸いだよ」

兄が重々しい口調で、母の言葉を遮りました。

「犯人は女の子を『殺した』んだろ? ただで済むワケねーだろ」

「兄さん!」

あんまりな言葉に、わたしは兄の腕を引っ張りました。

しかし兄は強い目で、わたしをにらみ返します。

「…こっちだって、被害者だっ!」

忌々しそうに呟く兄は、腕を振り解き、そっぽを向いてしまいました。

「…とりあえず、お葬式は明日にでもすぐ行います。マスコミなどは警察の方が抑えてくれるそうですから、みなさんもくれぐれも…」

「分かっているよ」

「身内のことだからな」

血縁者達は心得たように頷き合います。
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