magic voice



桜の花は、まだ咲いてはいない。

春がくるのを、ただ待っている。



もう少し。

あとちょっと。

『運命の時』まであと数時間。

と、朝日を受けながら桜の木は思った。



ある古びたアパートのすぐとなりに

堂々と構える美しい木。

その木が気にかけているのは、アパートに住む一人の少女。

並ならぬ可愛い容姿、周りを魅了する存在。

少し天然で、見た目も中身もふわふわで。

でも、そういえば、あの子は恋を知らない。

17才になるまでは、ね。

だって今日、彼女は『運命の時』を迎えるんだから。


今日の8時10分。


彼女は17才になる。






.
< 1 / 4 >

この作品をシェア

pagetop