To Heart

「川口くんって、背が高いよね。何センチ?」

「あ……176センチです」

後ろに乗っている彼女の手が、遠慮気味に僕のコートを掴む。

なんともないフリで話したりしながらも、僕の意識は背中に集中している。

寒さなんか気にならない位、体が熱い。

彼女を意識して高鳴る胸の響きを、背中から彼女に気付かれてしまいそうで、ますます鼓動が早くなる。

カフェ以外の場所で、こんな風に彼女と話をしていると、なんだかデートをしているみたいな気がしてしまう。

彼女の声が、すぐ後ろから響いてくる。

とても不思議な感じだ……

今、彼女はどんな顔で話しているんだろう。

彼女の顔が見たい。

そう思う一方で、僕の顔が彼女に見えなくてよかった。とも思う。

今僕の顔を見たらきっと、彼女に僕の気持ちが気付かれてしまうに違いない。

< 106 / 171 >

この作品をシェア

pagetop