To Heart
「雪……降らなかったね」

会話が少し途切れると、彼女は空を見上げながら思い出したように言った。

「え?」

「なんとなく降りそうな空気だったから、ホワイトクリスマスになるかなって思ってたのに」

そうだ……今日はイブなんだ。

こんな恋人にとって大事な日に、偶然でも彼女と僕が一緒にいる。

あと少しで日付が変わる。

せめて、今日だけ……日付が変わるまで側にいたい。

このまま、時が止まってしまえばいいのに。

そうしたら、ずっとこのまま彼女と2人でいられるのに。

彼女を独り占めできるのに……

「あ、私の家、あのマンションなんだ」

7階建てのマンションが視界に入ってきたところで、彼女が言った。

「そうなんですか……」

僕の願いは届かなかった。


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