To Heart
「川口くん?」

彼女は僕を振り返り、急に立ち止まった僕に首を傾げる。

もう少し、彼女と一緒にいたい。

もっと側で彼女の声を聞いていたい。

彼女に触れたい。

抑えがきかなくなっていく。

僕の心が、驚くぐらい大胆になろうとしているのが分かる。

痛いぐらいに胸の高鳴りが増す。

僕は、小さく息を吸い込み

「今日は……」

と言いかけた。

しかし、それと同時に、不意にマンションの方から彼女の名前を呼ぶ声が聞こえる。

その瞬間、僕の背中にスッと冷たい物が走り、僕は慌てて言葉を飲み込んだ。

「あれ?」

声の方に向いた彼女の表情が、一気に明るくなっていく。

こちらに向かって走り寄って来たのは、紛れもなく以前店の横で見た『西島くん』だった。

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