To Heart
彼のその態度が、僕には不思議だった。

この人は、クリスマスの夜に彼女と帰ってきた男を前にして、なんとも思わないのだろうか。

疑う気持ちはないのだろうか。

もしかしたら、なにかがあったのではないか? とは思わないのだろうか。

彼女のことを信じているから?

いや……違う。

要するに2人にとって僕は『男』として意識もされないような存在なんだ……

夢は所詮、夢でしかない。

僕は今更のようにそのことに気付き、泣きたくなった。

「あ、いえいえ。通り道だったので」

涙が上がってこないように、グッと堪えながら、かろうじて返事をした。

心がギュウギュウ締めつけられる。

これ以上2人の幸せそうな顔を見たくない。


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