To Heart
すると、なにかを思いだしたように「ちょっと待ってて」と言ってトラックの方に走っていき、あの時僕が渡した傘を手に持って戻ってきて、僕にそれを手渡した。

「これ、ありがとう。ずっと返さなきゃって思っていたんだけど、家も連絡先も知らなかったし……ごめんね、ずっと借りっぱなしになっていて」

ずっと持っていてくれたんだ……僕の傘……

「あの時、川口くんが傘を貸してくれて、もの凄く嬉しかった……ありがとう」

訳分からないことを言って傘なんか渡して、アホみたいだったけれど、あの時の僕の行動はきっと無駄ではなかった。と、そう感じて僕も嬉しかった。

もう彼女と会うのはこれが最後なのかもしれない。

彼女との「別れ」を意識した時、僕がずっと思い描いていた通り、最後に彼女に告白することは許されるだろうか。という思いが頭に浮かんだ。

彼女に気持ちを伝えるチャンスは、これが最後に違いない……


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