To Heart
すると、彼女がこちらに向かって歩いてくるのが微かに目に映る。

もしかしたら、これはチャンスかもしれない!

ハンカチというのはいかにもだが、自転車の鍵ならイケるかもしれない。そんな考えが咄嗟に頭をよぎり、僕は思いきってこの作戦を実行する覚悟を決めた。

ゆっくりと上着のポケットに手を入れ、自転車の鍵に手を伸ばし、それをグッと握りしめる。

心臓が高鳴り始める。

早くも緊張しすぎて喉が渇き、顔も火照りだしているのを感じる。

ただ鍵を落とすだけだというのに、胸が苦しい。鍵を握る手がジワリと汗ばむ。

ヤバい。

ヤバ過ぎる。
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