To Heart
何故だか意識を集中させた背中まで熱を帯びている気がする。

目の端に映る彼女が徐々にこちらの方に歩いてくる。

い、今や!

僕は気合いを入れるようにグッと目をつぶり、棚の上の本を取るフリをして半ばヤケクソ気味にポケットに忍ばせた手を勢い良く外へ出した。

それと同時に、計算通りに後方に飛び出した自転車の鍵。

僕は恥ずかしさから、そちらの方に目を向けることが出来ず不自然に本の方に目を向けたまま立ちつくした。

「あの。落としたわよ」

背後から上品そうな声がする。

ますます高鳴る心臓。
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