To Heart


彼女が僕の顔を覚えてくれたのは、僕が通い始めてから1ヶ月ぐらい経った頃だった。

会計の時に彼女が「いつもありがとうございます」と言って僕に親しみを感じるような笑顔で笑い掛けてくれたのだ。

「え!?」

僕は思いがけない彼女からの言葉に、思わず反応して驚きの声を上げた。顔が火照り出し、赤くなっているだろうと言うことが自分でもわかった。

「お、覚えていてくれたんですか?」

思わずそう聞き返すと、今度は彼女の方が一瞬驚いたような顔をした。

後でよく考えたら、彼女にとってあれはただの常連客に向けての「決まり文句」のような物だったに違いない。

その言葉に、まさか僕が食い付いてくるとは思ってもいなかったのだろう。

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