To Heart
僕が唯一、一般的な人より秀でた物があるとすれば、文字を書く事だと思う。
母親に「字はきれいに越したことはない」と言われ、小学校に上がると同時に書道教室に通わされる事になった。
行くまでは嫌々だったが、目の前に並べられた見たこともない書道の道具や、真っ白い半紙は、何だかもの凄くいいことが始まるような気がしてワクワクした。
書道教室の先生は少し変わった先生で、初めての僕に「お手本通りに書きなさい」とか「きれいに書きなさい」とは言わなかった。
「まずは「書く」事とお友達になってみよう」と言って、僕の好きな言葉を、僕が思うままに筆を使って半紙に書くよう言った。
鉛筆の持ち方もまだ辿々しい僕が、筆と墨を使って文字を書くと言うことは容易なことではなかったが、白い紙に自分の気持ちを込めながら、思いのままに文字を書く事は、とても楽しかった。