来栖恭太郎は満月に嗤う
俺は趣味として乗馬を嗜む。

特に動物好きという訳ではないし、遠出の手段ならば馬など利用せずとも幾らでもあるのだが、この乗馬という奴は存外に俺の性にあった。

今では週に二、三度、屋敷の広大な敷地を愛馬で駆けて愉しんでいる。

戯れに何でも試してみるものだと、少し考えを改めたりもしている所だ。

ところで。

俺は食事を終え、空いた食器を下げるリルチェッタの姿を見る。

黙々とメイドとしての仕事をこなすリルチェッタ。

この屋敷での生活にも慣れたのか、最近では俺に対して、あからさまな憎悪を見せなくなった。

だが、この娘が復讐を忘れるような女だとは思っていない。

むしろ、そう見せかける事で俺の油断を誘おうとしているのだろう。

もっとも、油断していた所でこんな小娘如きに討たれるほど、俺は腑抜けではないが。

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