ソプラノ
「早川・・・弾くんかな?」








俺は頭上から聞こえてきた低い声に、顔を上げた。







顔を上げると、そこには40代後半くらいのおじさんが立っていた。


髪には少し白髪が混じり、顔には皺が深く刻まれていた。








「え?はい」





俺は急いで立ち上がると、その男の前に立った。







「娘が・・・・涼が仲良くしてもらってるみたいで。・・・鈴野涼の、父親です」






その男は“涼の父親”だった。






顔をよく見ると、目の辺りだろうか?



―少しつった猫のような目。

―優しそうな笑顔。



・・・とても涼に似ていた。






「あ・・・・涼の・・・・俺も、仲良くしてもらってます・・・」



途切れ途切れの敬語で、涼の父親に挨拶する。



そんな俺に涼の父親は微笑んだ。




「硬くならなくていいよ。涼の事をとても好いてもらってるみたいで」




涼の父親はフッと口元を緩ませ、どこか寂しそうに笑った。





その顔色はあまり良くなく、俺にはとても疲れているように見えた。







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