忘れられない人
案内されたちょっとした個室に、真向いになるように腰掛ける。

「何飲む?」

メニューを手渡すと、凌は一緒に覗き込んでくる。

「私、ビールって好きじゃないんで、ジントニックで。」

「じゃあ、オレもそうしよっかな。お酒が強いわけじゃないから、ビールも飲まないんだよね。一杯でもーう、頭に血がのぼってドクドクだよ。」

「お酒、飲めないの?この間は全く飲んでなかったから・・・。」

「いや、全然ってわけじゃないけど、飲めるうちには入ってないだろうな。」

そしてうちらは、枝豆と軟骨の唐揚げ、ジントニックを2杯注文した。

頼んだものがくるまでの間、無言の空気が流れる。

私も、意識しているからか、自分からなかなか話かけれずにいた。

先にその沈黙を破ったのは凌だった。
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