名残の雪
目の前には不敵な笑みを浮かべる久保くんがいて。
ふわっと半年前の出来事を思い出させた。
窓の外は白いカーテンで覆われている。
「背伸びし過ぎ。あんたさ、もっと自然な方がかわいいと思うけど」
彼が相変わらず、“あんた”と呼ぶのはいつものこと。
「あんたに言われたくない」
わたしも彼を“あんた”と呼ぶのもおきまりで。
今更、名前で呼び合うなんてできないし、想像でもしてしまったら全身痒くてしかたない。
一つ一つ真剣でマジメな彼に対し、正反対のコイツ。
一つ一つがカチンとくるし、一つ一つ失礼で。いい加減そうにも見えるけどそれが正論過ぎて反論できない。
「素直って言葉、知ってんの?」
鼻にかけたような言い回しにまたカチンとくるようじゃ、わたしは彼に踊らされていると認めるしかない。
わたしたちのこのやり取りは半年前からで。相性が合わないのかなんなのか。
関わりたくないのに、向こうからやってくる。