名残の雪

目の前には不敵な笑みを浮かべる久保くんがいて。

ふわっと半年前の出来事を思い出させた。

窓の外は白いカーテンで覆われている。


「背伸びし過ぎ。あんたさ、もっと自然な方がかわいいと思うけど」

彼が相変わらず、“あんた”と呼ぶのはいつものこと。


「あんたに言われたくない」

わたしも彼を“あんた”と呼ぶのもおきまりで。


今更、名前で呼び合うなんてできないし、想像でもしてしまったら全身痒くてしかたない。


一つ一つ真剣でマジメな彼に対し、正反対のコイツ。

一つ一つがカチンとくるし、一つ一つ失礼で。いい加減そうにも見えるけどそれが正論過ぎて反論できない。


「素直って言葉、知ってんの?」

鼻にかけたような言い回しにまたカチンとくるようじゃ、わたしは彼に踊らされていると認めるしかない。


わたしたちのこのやり取りは半年前からで。相性が合わないのかなんなのか。

関わりたくないのに、向こうからやってくる。
< 10 / 34 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop