名残の雪
わたしが名前を知っていたことが当然かのように。


『そりゃ知ってるか、彼氏の弟だもんな。だけどさ、弟の俺が言うのもアレだけど。兄貴はやめといたほうがいいよ』

『おーい、修平ーっ!人数足りないからやんないかー!?』

クラスの男子グループのひとりがこちらに向かって大きな声をあげる。


『わかったーっ』

元気よく返事したのは、目の前にいる二重人格みたいなコイツ。


そして。


『忠告はしたから、何があっても俺のせいにはしないでくれよ。ついでにあんた、プライドも高いんだな』

そう言い残してわたしの前から立ち去った。



顔は整っていて、勉強もそこそこできる。体育の成績も悪くないみたいだ。

友達も多く人気者。問題の“協調性”も持ち合せている、わたし以外に対してはだけど。そして、得意技は誰にでも笑顔を振り撒けること。


コイツが何かと突っ掛かってくるようになったのはこの頃から。
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