名残の雪
誰かがシュートでも決めたのか、騒がしい歓声に溢れる体育館。
「久保くーんっ、あたしが彼女になってあげるーっ!」
唐突に耳に刺さる叫び声。
「バーカ!」
負けじと大きな声で返すのは久保くんだ。
「コラーッ!次、お前たちの試合だぞー!」
男女交互に行われるバスケの試合。
上靴と床が擦り合う音に、ボールが弾く音。ざわつく周囲の雑音に、意識は現実へと引き戻された。
こんな光景、今に始まったことじゃないというのに。怖くて顔を上げることができないわたしは、額を膝に貼り付けたまま。
なんで、こんな面倒なヤツなんだろう。妙に自信家で、妙に人気者で。愛想もいい。わたしとは正反対。
そう…。
わたしは久保くんを好きになっていて。
いつまでも『待ってっから』って言葉を鵜呑みにしていて、だけど明日にはと意気込んでも。
結局は昨日と何も変わらない毎日が、ただ無駄に過ぎていく。
―今は考えられない。
いつまでも変わらないこの関係が疎ましかった。自分からそれを選んだはずなのに。
きっと、あの返事をする前から好きだったのに。
それでも、今日の放課後。委員会があってもわたしたちの関係は何も進展しないと思っていた。