名残の雪
ペン先を紙の上に置き、なかなか動いてくれないわたしの手。


いつまでも待ってくれるとは思ってなかったし、待ってるなんて言葉は信じてなかった。

最初の印象は最悪な奴だったのに。

わたしの中で、確実に大きな存在となっていたのは事実だったから。


“好き”

素直にそう書いていた。


なのに。


「知ってるし」

って、小声で呟いて笑い飛ばした。


わたしは眉と眉の間に皺を作り上げて、ニヤニヤする久保くんを見る。


「俺のヤキモチ作戦の勝ちだな」

「…何それ」

まさか体育館の一連がそれだとか言わないよね?と、ひそひそ声で問い詰める。


憎たらしそうに見上げれば。

「効果大だな」

嬉しそうに笑う。


「信じらんないっ!」

大声を張り上げたい気持ちを抑え、睨みつけるだけに留める。


わたしが書いた“好き”の文字の下に、“俺も”と書き込んで。


「覚悟しとけよ。兄貴のことなかったことにさせるくらい、俺のことでいっぱいにしてやるから」

憎らしい笑みを浮かべた久保くんに。


わたしはいつまでも後悔ばかりしそうな予感がした。

もうその手前まで来ている気がする。


だって、わたしの頭の中は久保くんのことでいっぱいだから…。



2011.1.10
end.

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