名残の雪
昨日―。


「やーっと、春だね!」

隣を歩く知恵(チエ)はさっきから、春が来て嬉しそうにニコニコ顔。


というのも、4月に入って彼氏ができたから。

1年の時、同じクラスだった高山くん。


「あー、幸せ~!」

地に足が着いていないような知恵の足取りは、どうみても軽やかだった。今にもスキップなんかしてしまいそうな勢い。


それもそのはず、片思いしていた相手から呼び出されて告白なんてされたら、きっと知恵じゃなくたって浮かれると思う。


「ちょっと、雅美(マサミ)!なんなのよー、暗くない?彼氏とうまくいってないの?」

足を止め、わたしの腕を取り顔を覗かせる。知恵の大きな瞳がいかにも心配そうに垂れ下がる。
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