そして俺らは走り出す
「じゃっ、お先にしっつれーいっ」


そんなことを言いながら、元気に梨沙は体育館を後にした。

他の奴も
「紘ばいばーい!」
「田中まったねー!!」

とか好き好きに言って帰っていく。



最後に残ったのは、そうアイツ。


桜音だった。



桜音は、他の奴がもうとっくに体育館を出たというのに
一向に体育館を出る気配はない。


体育館の出入口で固まっている。





どうしたんだ……?

と、思考を巡らせている内に1つの事が思い当たった。


俺等が1年の時は、先輩から先に出る。と言う決まりがあった。

今の女バスは違うけど。


コイツはそれを守ってるのだろう。


俺は小学生の時から
桜音はなんと、高校になってからバスケを始めたらしい。


だから、俺が先に出るのを待ってるんだろう。



可愛い奴。


「あ~…先にどうぞ。」

俺が手を出しながら言うと、アイツはそそくさと挨拶をしながら出ていった。



さて、俺も出るか…。

そう思って、体育館の方を向く。

すると……









「さようならっ…。」







か細い小さな声で、そんな言葉が聞こえた。


え、と思い
振り返った時には、もうアイツは後ろを向いていて。

俺も慌てて返事をするが
小走りで行ってしまったため、俺の声が届いたかどうかは分からないままだった。





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