ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】

「あっ……」


無い…聖斗の名前は、どこにも無い…


戸籍上では
私と聖斗は他人なんだ…


ママの息子じゃない…


ほんの少しだけ
希望の光が見えた。


聖斗に教えてあげなくちゃ…


私は急いで車に戻ると
このことを、早く聖斗に話したくて
ソワソワしっぱなし。


やっと、高速のサービスエリアで
伯母さんが車を降り
トイレに向かったのを確認すると
私は鞄から薄緑の封筒を取り出し
聖斗に差し出す。


「なんだよ…これ?」

「私の戸籍謄本だよ。見て」

「見てどうする?」

「いいから、見て!
これにはね、聖斗の名前なんて
どこにも載ってない。
私と聖斗は兄妹じゃないよ…」


すると聖斗は
フッと、呆れた顔をして笑った…


「そうゆーことか…」

「聖斗の謄本も調べてみようよ。
ね、そうしよ?
私たちは兄妹なんかじゃ…」

「美羅」


私の言葉を遮り
聖斗は謄本の入った封筒を
クシャクシャに丸めて
私の足元に放り投げてきた。


「聖斗…どうして?」

「美羅、そんなの
とっくの昔に調べたさ…
俺がそんなことに気付かないとでも思ってたのか?」

「えっ…」

「俺は、親父とお袋の実子になってたよ。
養子なんかじゃねぇ」

「じゃあ…」


嬉しさを隠し切れない私とは
対照的に
聖斗の表情は暗い。


「そんなの、出生届を出す前に
細工しようと思えば
なんとでもできる…

いいか、親父は薬剤師だ。
医者の知り合いも大勢いる。
それに、お袋の方の死んだじいさんは
地元じゃ、かなりの権力者だったらしいからな…

体裁を考えて
母親の名前を変えてもらったとしたら…どうなる?」

「あっ…」

「戸籍なんて、意味ねぇんだよ…」





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