ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】

私の気持ちなど
知るよしも無い聖斗は
幼かった私たちの昔話しで
一人、盛り上がってる。


「聖斗…」

「んっ?」

「…今と昔とは、違うんだよね…」


我慢出来なくて
つい、言ってしまった…


「何が違うんだよ」


アッケラカンとした顔で
うつむく私の顔を覗き込む聖斗


「うぅん。なんでもない…」


その屈託の無い笑顔を見てしまうと
何も言えなくなる。


「変なヤツだな…
あっ、そうだ。
ガソリン入ってなかったんだ。
ちょっとスタンド寄るからな」

「うん」


せっかく聖斗と2人で遊びに行けるのに
全然、楽しくないよ…


「いらっしゃいませー!!」


目が覚める様な元気な声で
スタンドの店員に車を誘導され
停止すると
聖斗は飲み物を買ってくると言って
車を降りていく


やっぱり、ちゃんと聞くべきなのかな…


このまま、曖昧な関係を続けるのは
イヤだ…


聖斗が戻って来たら
今の私のこと
どう思ってるか聞いてみよう。


一大決心をして
両手をギュッと握り締めた。
その時、窓ガラスをトントンと叩く音


「すいませーん
灰皿、大丈夫ですかー?」

「あっ…は、はい。
見てみます」


私は慌てて灰皿を引き出し
吸殻が入っているのを確認して
それを引き抜いた。


店員に渡す直前
違和感を感じて
もう一度、灰皿に目をやる。


「あっ…」


これって…


数本の吸殻の中に
聖斗が吸ってるのとは違う銘柄のタバコ
そして、そのフィルターには
ローズ系の口紅が
薄っすらと付いていた…


女…だよね…


聖斗は、平日ほとんど車に乗らない。
休みの日に
わざわざ会う女性…
それは、つまり特別な人…


やっぱり、彼女居たんだ…


「お預かりしまーす!!」


無駄に明るい声の店員に
イラッとしてしまう…


そうだよね…
大学に行けば、綺麗な大人の女性が一杯居る。
中学生の私なんか
ガキで相手にならないよね…




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