ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】

聖斗は、もう一度キスすると
今度の土日に名古屋に行こうと言い出した。


「名古屋?何しに行くの?」

「んっ?実はな、この土日に静岡で
調剤薬局の仲間内で
親睦会があんだよ…

親父は面倒くせぇっから行きたくないって言ったんで
代わり兄貴が行くことになってたんだけど
こんな状態じゃ無理だろ?

そしたら、親父のヤツ
今更断れないから
俺に行ってこいって言いやがって

どうせゴルフ三昧だから
ちょっとだけ顔出しゃいいってことだし
土曜の夕方までゴルフ付き合って
帰ろうって思ってたんだよ。

で、美羅も名古屋に来れば
待ち合わせて、一緒に居られるだろ?」

「あ…」

「泊れるし」

「それって…密会?」


ドキドキしながら私がそう言うと
聖斗は大笑いして
「バーカ!!」と、私の頭をペチンと叩く。

「痛ーい!」

「なに期待してんだよ!
京子さんとこに行くんだよ」

「えっ…京子さんとこ?」


聖斗は自分を心配してくれた京子さんに
酷いことしたって、後悔してるみたいで
彼女に会って謝りたいんだと言う。


「2人で行って
俺たちのこと話そう…」

「そうだね…」


私も京子さんにはお世話になったし…


「美羅は智可の家にでも泊りに行くってことにしとけ」

「うん」


おぼろげな
私と聖斗の未来に
ハッキリとした輪郭が見えだした。


嬉しくない訳がない。


でも、問題は優斗のこと…

理絵さんとの離婚話しは
優斗が戻って来てからと
聖斗に約束してもらった。


それは、今まで私を大切にしてくれた優斗への
せめてもの懺悔の気持ちからだった。


まず、一番に私の気持ちを優斗に伝え
謝りたい。


それまでは、今まで通り


聖斗は理絵さんの夫

私は優斗の妻


秘密の関係を貫く…




…そんな私たちの決断を知る由もない瑠菜ちゃんが
天使の様な汚れの無い微笑みを浮かべてる。


この微笑みが
私たちに幸せを運んで来てくれますように…


そう願わずにはいられなかった。







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