私(獣師)と、あいつ(神獣)

一礼し、お盆にお茶とお菓子を乗せ、部屋へと入って来た目を見張るほどの美青年は、














「九ちゃん!!」












ではなく、弥生の父―――つまり神崎家四百九十九代目当主・神崎干支の神獣、白面金毛九尾の狐「九平」である。




九平は弥生が生まれた頃から、ずっと弥生の世話係として傍に居た。
弥生も、九平を実の兄のように慕っている。















「主が、姫様を呼んで来いとの事でしたので・・・。書物は、全てお読みになられたのですか?」










「ぜーんぜん!!!こんなの、読み切れる訳無いじゃん!!!」
















弥生は、足をブラブラさせ口を尖らせながら言う。その様子を、九平は可笑しそうに笑い

















「やはりそうでしたか。では、主にはその様にお伝えいたします。」











「ついでに、物忘れも大概にしろって言っといて。」










「フフッ、かしこまりました。」

























そう言うと九平は、弥生にお茶を差し出して













「儀式の前に、少し休憩なさっては如何でしょう。姫様の好きな、水羊羹もお持ち致しましたよ。」


















と、水羊羹の乗った皿も差し出し、弥生は、嬉しそうに受け取った。

















「ありがとう!今、欲しかった所だったの!!流石九ちゃん!!」







「お褒め頂き、有難う御座います。」


















弥生は、水羊羹を頬張り、お茶も一気に飲み干す。

















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