ダンデライオン~春、キミに恋をする~


黙ってあたしについてきていた沙耶は、小さくため息を零した。


「逃げるの、やめたんじゃなかったの?」

「…………っ、でも……」


わけ、わかんなくて……


「……シィのさ。
相手の気持ちを真っ先に考える優しいとこ、あたしすっごく好き。
でもね? 恋愛は時に自分勝手になってもいいんだよ?」


よしよしって髪をなでると、うんと優しい目であたしを覗き込んだ沙耶。


「沙耶ぁ……あたし……あたしぃ……」

「うん」

「こんなに……っ、ワガママ、で……ウジウジのあたしでも……い、いいのかな……」

「それは、本人に直接言う!今のシィの顔見たら、成田なんて言うかな?」



涙が溢れて止まらない。

なぜか泣き笑いの沙耶の顔を見て、さらに涙が止まらなかった。



あたし、もう一度伝えてくる。

好きですって。

ずっとずっと


去年の春、出会った瞬間から

あなたに恋に落ちましたって……。


「沙耶、あたし戻る……」

「ん! 行っといでっ」


パンッ!と痛いくらい背中を押され

あたしはS坂を全速力で駆け上がった。



あなたの元へ……この想いを届けるために!


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