恋人はトップアイドル
俺はハッとして目を開く。握っていた手を開いた。

優美・・・?
なんだ、優美になんかあったのか!?

暗闇も慣れてくれば、セットも客席も見える。
ファンから俺の姿は見えていないらしい。ざわめきだけが、どんどんうるさくなっていく。

それを聞いていたら、情けなさが俺を締め付けた。


でもそれよりも優美が気になる。目も慣れてきた。これなら裏へ行けそうだ。


そう思い、俺が客席に背中を向けた瞬間、歌声が聞こえた。

俺の足が止まる。バッと振り返った。


女の声だ。

そのうちに、ハッと気がついた。


この声は・・・・、俺がよく知る、俺がただ唯一思う、アイツだ。

透き通った、だけど確かに届く歌声。

その声から、伝わってくる温もり。力強さ。


アイツは俺に伝えようとしてくれてる。俺を、助けようとしてくれてる。


どこだ?どこにいる?

優美----------。



すると伝染するかのように、他のファンたちも歌いだす。その共鳴は、こんなに大きな会場の中、5万人が歌うそれはすごく荘厳で美しくて、俺はただただ、驚いていた。


パッと、照明が徐々についていく。

止まない歌声。

その中で俺は-------。


「優美・・・・。」


アイツを見つけた。アリーナ席の中央の通路側。大きく口を動かしながら、ファンに混じって歌うアイツの姿を、俺は見つけた。


どうしようもなく、胸が騒ぐ。なんだよこれ。今までにない気持ちだ。


もう、止められねえよ。


やっぱり俺は・・・、優美、お前が好きだ。
お前だけが、俺をこんな気持ちにさせるんだ。


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