恋人はトップアイドル
「ただ今音響障害により・・・」

そんなスタッフの説明が、会場のアナウンスで流れているのが聞こえた。
俺はあの後アカペラで、無事にソロのステージを終えた。


裏へはけたら、スタッフたちの拍手に迎えられた。くすぐったいような、だけど腑に落ちないような、複雑な気持ちだ。


「ハプニングはあったけど、あれはあれでとてもいいステージだったと思うよ。多分、今日の中で一番だ。よくやったよ、輝。」

悠が俺の肩を抱きながら、そういった。
リーダーからそう言われれば、悪い気はしねえ。


「次からは、ファンたちを不安にさせた分、エンジン全開でいこうぜ!」

悠のその声に、俺ら他のメンバーは強く頷いた。ハイタッチして、次の曲のポジションに移る。

しかしどうやら誰も、さっき歌いだした女が、優美だとは気づいてねえらしい。

・・というか、優美はどこだよ?


「優美ちゃんなら一足先に、次のポジションに移ってるよ。」

肩にポンと手を置かれ振り向くと、堂本が笑っていた。

「優美ちゃんも、よくやるね。本来ならかなり厳しく言いたいトコだが・・、今日は俺の負けだったよ。完全に、やられたな。感謝しろよ、輝。」

「・・言われなくても、わかってる。先、行くからな。」

「ああ。」


堂本は全てを見通したかのような目で、俺の肩から手を外した。
俺はそれと同時に走り出す。


コンサートの最中だ。集中すべきなのは、コンサートだ。


だけど今は、どうしてもアイツに会いたい。アイツの顔が見たいんだ。


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