恋人はトップアイドル
あたしはスタッフTシャツから、普段着に着替えた。顔や髪の毛は、もうぐちゃぐちゃだ。

どうにもならないとわかっているけど、顔を洗って、髪の毛を手櫛で整えた。

少しでもいい。少しはマシな自分で、輝に会いたい。


輝の行動の意味も、言葉の意味も、全てが自分に都合のいい想像を伴って考えてしまうけど、実際にはわからない。


だけど何故か、さっきからずっと鳴り続ける胸のドキドキを、止めることができない。


輝たちが先に上がってから、多分1時間くらいは経っている。あたしは逸る気持ちで、駐車場へ向かった。









地下へ繋がる重い扉を、力をこめて押した。
外へ出ると、ひんやりとした風が気持ちいい。

輝は・・・?


あたしは彼の姿を探す。


「優美!」

その時、どこからか名前を呼ばれた。その声に、ただただドキドキする。

「輝・・。」

輝がこちらへ走ってくる。

「お疲れ。」

「・・うん、輝も。」

「お前の方が疲れたろ。送るから、帰ろうぜ。」

輝は優しい笑顔で、さりげなくあたしの手を取った。

今までにない行動に、やっぱり戸惑う。でもそれ以上に、素直に嬉しいと感じる自分がいた。

「お前・・腹減ってる?」

車を発進させた後、輝がそう聞いてきた。

「え・・、あ、そういえば・・・、何も食べてないや。」

あたしは苦笑して、自分のすきっ腹をさすった。

「どっかで食ってくか?」

「え?」

そ、それって・・・。

「二人で。だけど。」

輝はあたしの気持ちを読み取るかのように、そう続けた。


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