恋人はトップアイドル
「・・だけど、さすがにこのまま泊まるのは・・。」

遠慮がちに優美が呟いた。

確かにそうだ。
個人的には優美が泊まっていくのは構わない。

ただ・・、立場的には、それをさせるわけにはいかない。

優美と恋人になれたとはいえ、一般的には依然俺らは、スタッフとアイドルでなきゃいけない。

このまま優美を泊まらせるとなれば、優美は着替えがないし、明日のコンサートにも響くだろう。

時計を見ると、もう日付は変わろうとしている。
なんとか、優美をこっから帰してやりてえが・・・。


そこで俺は、ふと気がついた。


「そういえばお前、親御さんに連絡したのか?」

俺は若干焦りながら、優美の肩を抱いてこちらに向かせた。

高校生の娘がこんな時間まで帰ってこなかったら、きっと心配するはずだ。

「へ?してないけど。」

しかし優美はいたって平然な顔でそう言ってのけた。

「してないって・・しろよ。心配すんだろ、親御さん。」

「ああ・・、大丈夫、前も言ったでしょ?家(うち)、親いないのが普通だって。」

そういえば・・・。

俺は、優美の家に行った時の事を思い出した。

あの時優美は、確かに今言った事と同じ意味の事を言っていたかもしれない。

俺の中で、聞きたくても聞けなかった疑問が湧いて出た。


「親御さんは・・仕事で忙しいのか?」

「うん。大体2週間くらい会わないのが普通かな。空く時は、1ヶ月くらい。」

「父親と母親どっちもか?」


俺は、本当に何の疑いも抱かず、その質問をした。返ってきた返事に対しての疑問を、そのままぶつけただけだった。


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