恋人はトップアイドル

恋のライバル?

「本当に今日はどうもありがとう!」
「また会おうね!」
「またな!」
「気ぃつけて帰れよ。」

Rの4人がそう言ってステージからはけた所で、全国ツアーの一番最初の東京公演は幕を閉じた。

公演が終了したというアナウンスが流れても途切れないファンたちからのアンコールに、スタッフの自分でさえもたまらない気持ちになった。

まだ、始まったばかり。

そう思うのに、色々な気持ちが込み上げてきて、涙が出そうになった。

「お疲れ様。」

「っあ!お疲れ様です!」

振り向いたら、堂本さんが立っていた。

「輝たちは一旦シャワーを浴びたら記者会見だ。僕と優美ちゃんも同行することになってる。いいね?」

「はい、あと20分程したら楽屋へ呼びに行けばいいんですよね?」

「ああ。」

全国ツアーの東京公演、つまりは一番最初のヤマを終えての、記者会見。

通しスタッフだからなのか、まさかそこにまで同行することになるとは思っていなかった。

「優美ちゃんと僕は、記者たちの後ろで彼らを見守っていればいいんだ。・・輝にとっても、そっちの方がいいだろうしな。」

その言葉に、咄嗟に堂本さんを見た。彼は優しく微笑む。


あの日。

輝のマンションから送ってもらったとき、堂本さんはこう言った。

「僕は、君たちの恋愛を邪魔するつもりはないよ。ただ、気をつけてね。この業界はね、君が思っている以上に大変で、残酷だ。優美ちゃんがもし本気で、これから先輝と一緒にいたいなら、君は、何かを犠牲にする覚悟を持たなくちゃいけない。

輝もきっと、それくらいはわかっているだろう。

でも何かあれば、僕はいくらでも力になるよ。輝がね、君がいると、見たこともないくらい、いい顔をするんだ。」


< 128 / 254 >

この作品をシェア

pagetop