恋人はトップアイドル

母からの知らせ

「ん・・。」

陽の光が、いつもより強い感覚がして、目が覚めた。
目だけをゆっくりと動かす。

ベッドの頭の部分にある小窓のカーテンが開いていた。

あれ・・・?

違和感を感じて、身体を起こす。いつもはあたしが起きてから、このカーテンを開けるのに・・・。

ハッと思い当たって、パジャマ姿のまま下へ降りた。

リビングへ入ると、案の定お母さんがソファーに座っていた。

「ああ、優美、起きた?」

飲んでいたコーヒーをソーサーに置いて、お母さんは柔らかく微笑んだ。

目を擦りながら、近づく。

「帰ってたの?」

「昨日の夜遅くにね。」

「今回は早かったね。」

あたしの言葉に、お母さんは苦笑した。

「そうね。ちょっとお休みもらったから。」

「お休み?」

「うん、3日くらい。」

「へえ・・、珍しいね。」

今までは、あたしの学校行事や誕生日でさえ、休めなかったのに。

何か、言いようのない胸騒ぎがした。

「だから今回はゆっくりしようと思って。優美もバイトがない時に休みを合わせたのよ。相当疲れてたのね。もうお昼近いわよ?」

「え!嘘!?」

そんなに寝てたの!?

驚いてリビングの掛け時計に目をやる。確かに、もう正午に近かった。

「何か食べる?」

「あ・・うん。」

あたしはお母さんの隣に腰掛けた。

「食べたら、どっか出かけようか?」

「え?」

突然の提案に驚いた。

「たまには、何か優美にご褒美あげないとね。新しく出来たモールにでも行ってみる?」

お母さんは楽しそうに笑って、そう言った。
こんなこと滅多にないから驚いたけれど、久々のお母さんとの外出に、胸が躍る。


< 140 / 254 >

この作品をシェア

pagetop