恋人はトップアイドル
輝と一緒にいたいとは思う。

だけど、独り占めしたいとは、思わないの。

「・・ごめんな。」

寂しそうに、輝が笑った。
そんな顔、させたいわけじゃないのに。

「輝、忘れてるの?」

自分の気持ちをちゃんと、輝の内(なか)に伝えたくて、あたしは輝の頬に手を寄せた。

「あたしだって、ファンなんだよ。ファンだから、輝を好きになれたの。ここに来れたの。」

感謝してるの。

輝が、アイドルであってくれたこと。

「輝がアイドルじゃなきゃ・・、出会えなかった。だからあたしには、輝のファンを裏切るようなことはできないよ。」


伝わってる?あたしの気持ち。

輝がフッと笑った。さっきとは違って、しょうがないなとでも言いたそうな、だけど優しい笑顔だった。

輝はあたしの手を自分の手で包み込む。

「わかったよ。・・まぁ大阪が終わるまでは、気をつけねえとな。」

その言葉にホッとした。ちゃんと伝わってる。

「でも・・、だからこそ、一緒にいる時間は容赦しねえからな?」

「え?」

怪しげな輝の表情に、胸がドクンと音を立てた。

「普段会えねえ分、お前に触りまくってやっから。覚悟しとけよ?」

「さ、さ、触っ・・!!」

触るって・・・なにそれ!

恥ずかしくて、開いた口が塞がらない。
胸がドキドキと鳴って、顔も熱い。

思わず変な妄想が頭の中を巡りそうになって、ブンブンと首を横に振った。

「はいはい、冗談だよ。ったく、本当にお前はすぐ赤くなんのな。」

輝が呆れたように笑う。だけど次の瞬間、真剣な顔でこう言った。

「大阪も・・頑張ろうな?」

答えはもちろん決まってる。

「・・うん!」


< 139 / 254 >

この作品をシェア

pagetop