恋人はトップアイドル
「・・うん。」

寂しさと、切なさ。喜びが、胸を襲った。

お父さんが死んでから、もう10年。未だに愛されているお父さんが、愛しているお母さんが、ただただ凄いと思う。

そんな二人の元に生まれたことを、ただただ、嬉しいと思う。

「・・いつから?」

「決まったら、今月中には。」

今月中・・・。

胸の中に、やっぱり寂しさが巣くった。

「優美。毎日、電話をしましょう。」

お母さんがテーブルの上で、あたしの手を握った。・・温かい。

「電話、できるの?」

「するわ。絶対よ。」

「あなたが夏休みになったら、遊びに来なさい。色んな場所、連れて行ってあげるわ。」

「・・うん。」

「・・優美、お母さんは、死んだりしないから。」

涙が、こぼれ落ちた。

やっぱり、心配で、たまらない。
お父さんと同じになったらとか、色んな気持ちが、あたしを襲う。

「信じて、お母さんのこと。」

でも、お母さんの信念が、伝わるから。

あたし、引き止めたくないよ。

「どこにいても、お母さんの気持ちは、変わらないのよ。」

あたしはコクコクと、首を振って頷く。

わかってる。わかってるよ。

「・・あと3年、頑張るから。もう少しだけ、お母さんのわがままに、付き合ってくれる?」

「・・ん。」

涙を、お母さんと繋いでない方の手で拭った。

精一杯、笑ってみせる。

お母さんも、泣きそうな目をしていた。だけど、あたしを見て、笑ってくれた。


こういう母娘の形があっても、いいよね。


お母さん、あたしも、頑張るよ。


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