恋人はトップアイドル

危機感募る新学期明け

大阪公演を無事終えて、いったんあたしの仕事も終わった。

がむしゃらに過ぎた1ヶ月。色んなことがありすぎて、本当に濃い毎日で、夏まではまた普通の生活に戻るんだという実感が、あたしにはまだわかなかった。

それに、仕事がないということは、輝にも会えなくなる。

ただ輝と付き合えているだけでも奇跡なのに、大阪公演の時は毎日一緒にいれたし、最近輝はわかりやすすぎるくらい、あたしを大事にしてくれる。それが嬉しくて、幸せで、いつの間にか安心してしまっていたけど、離れるとなったら話は別だ。


・・・かといって、簡単に会えるはずもないしなぁ。


輝は大阪公演最終日を終えたあと、あたしにこんなふうに言った。


『しばらくは映画が忙しいから会えねえけど、なんかあったら電話でもメールでもしろよ?それが終わったら、デートしような。』


デートって・・できるの?

そう思ったけど、あたしは首を縦に振った。

それから2日。明日からはもう新学期が始まる。

今日は一足先に生徒会の集まりがあったし、明日は初日だっていうのに抜き打ちテストがある。

・・・余韻に浸る暇もないわ。


「・・と、7時だ。」

今日はRのレギュラー番組の日だ。今日の内容は、もちろんコンサート特集。映像で見ると、また新鮮だった。


ナレーターの人が、映像に合わせてコンサートの様子を伝える。

すると。


『東京公演初日のこと。そのアクシデントは、突然起こった!』

「・・あ。」

忘れもしない、東京公演初日のハプニング映像が流れていた。映像で見ると、ステージや客席は真っ暗だった。

ざわめきが聞こえる。ペンライトの揺れも完全に止まっていた。


・・こんな感じだったんだ。

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