恋人はトップアイドル
『すると、どこからか歌声が!』

ナレーションが聞こえる。

もちろんそれは、あたしのものだ。


・・・あっちゃーーー。

あたしは顔を被いたくなるような衝撃を受けた。

まさかこんな歌声を全国放送で流されるなんて・・!!

というか、よくこんな勇気持てたなあたし。
身の程知らずもいいところだわ。


でも。


その後、会場が歌い出す。輝の姿が、映し出された。

アカペラでしっとりと歌い上げる輝の横顔が、汗できらめいていた。


・・・かっこいいなあ。


胸にズンと来る確かな感動。そして、輝の姿。
全てが、あたしを打ち抜いた。


こんなひとと付き合えてるなんて・・、本当に奇跡だよ。


神様がいるとしても、お礼は何回言っても足りない気がする。
前ならただ、かっこいい、だけで終わっていた。

だけど今は、かっこいい、よりももっと大きな気持ちを持てる。


・・輝の一部を、知っているからこそ。


「あたしも・・頑張らなくちゃ。」

せめて少しでも、彼に近づけるように。

あたしはあたしのことを、きちんとやらなくちゃね。














『・・充実した春休みを送り、心身共に快活な今、新しい学期が今日から始まる。』

「・・充実した、って、決め付けかよ。送れてなかったらどーすんだよ。」

始業式にはお決まりの、校長先生の長い挨拶を、あたしたちは体育館の袖口で聞いていた。

その挨拶に、小声で健人が突っ込みを入れる。

「・・そんなことより、挨拶考えてきた?」

それは無視して、あたしは健人に聞いた。生徒会長のあたしと、副会長の健人には、始業式や終業式など必ず挨拶をするという決まりがある。

これがまた全く持って面倒くさいんだけど、まあ仕方ない。



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