恋人はトップアイドル
「あ、あ・・ありがとうございますっ!!!」

社長の優しさが有り難くて、立ち上がって深々と頭を下げた。

「ありがとうございます・・・。」

こんなあたしの、わがままを許してくれるなんて。
なんてあたしは、果報者なんだろう。

涙が出そう。


「頭を上げなさい。」

社長の声に、静かに頭を上げた。見れば、さっきより優しい目をした社長がいる。

「やるからには、きちんとやってもらう。それから今度は嘘なしで全部、報告してもらう。あと、口外は禁止だ。いいね?」

「・・はい、精一杯、やらせて頂きます。」


恩には、報いなければ。


堂本さんのさっきの言葉がこだまする。それは、あたしのセリフだ。

報いよう、精一杯。


「今日は時間がない。君には改めて、事実を確認する。いいね?」

「はい。」

「それから輝。」

社長の声色が、途端に厳しくなった。

「お前がこの子に肩入れをするのは・・・、仕事が気に入ったからか?それともこの子が気に入ったからか?」

な・・・!?

その質問に、小さな動揺が胸に広がった。

輝・・、なんて答えるの・・?

少しの睨み合いが続いた。

そしてやがて、輝は口を開き・・・。

「俺が、普通の女に肩入れすると思ってんすか?」

と、輝は言った。

そうそれは、初めて会った時みたいな、冷たい声で・・・。


わかってる、演技だと。
わかってるのに。


不安が、胸を襲った。


「・・そうだったな、輝には小夜がいるからな。」


さ、よ・・・?誰・・?


「あいつの名前を出すな。」

急に、輝の態度が一変した。
今まで見たことがないくらいの、冷たいオーラ。

だけどそれは・・、知らない女(ひと)への愛情を感じさせた。

輝────??


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