恋人はトップアイドル
優美・・・?

その小さな声に、心が遠く離れてくような違和感を覚えた。

実際離れるなんてそんなこと、許さねえけど。

「お前のどこが欲張りなんだよっ・・と。」

「へ、あ、輝っ?」

こいつにちゃんとわからせねえと。
俺にとって一番大事なのは、お前なんだってこと。

俺は狭い車の中を無理矢理、運転席から助手席へと移動した。慌てふためく優美を自分の膝の上に、向かい合わせに座らせる。

「ちょ、恥ずかしいよ・・っ。」

「俺は恥ずかしくねえよ。」

「でもっ・・。」

「優美。」

真っ赤になって焦る優美を、真剣に見つめた。優美はようやく、少し静かになった。

「さっきのは演技だ。そうだな、さっきのは・・・Rの輝だ。」

「Rの、輝・・。」

「でも今は違う。今は、笹本優美の彼氏の、結城輝だ。」

「彼氏・・・。」

「そうだろ?」

どこか実感していないような声を出す優美に、俺は思わず苦笑した。

「俺はお前の彼氏なんだ。んでお前は俺の女だろ?だからもっとワガママ言えよ。もっと欲張れよ。じゃねえと・・」

「輝?」

この先は、恥ずかしくてさすがに言えなかった。

「輝・・、あたし、我慢してたのかな。」

優美がぽつりと、そう呟いた。

「頻繁に会えるわけじゃないし、輝はアイドルで・・大事な時だし、あたしなんかが彼女でいいのかなとか、すごいたくさん考えすぎてた。」

「優美・・。」

「でも、わかってる。普通の恋人みたいにできないって、わかってる。だから言えなくて・・。それでも、輝がこうやって大事にしてくれるたび、嬉しいし、一緒にいたいって思うし・・。・・ごめん、なに言ってるのかわかんなくなってきちゃった。」

苦笑した優美が、すごく愛おしかった。

「ちゃんと伝わってるから、心配すんな。」


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