恋人はトップアイドル

この先もずっと SIDE 輝

「堂本、あとはよろしく頼むな。」

「ああ。」

堂本が俺の車で駐車場から出ていくのを見届けた後、俺はもう1つの車に乗り込んだ。
助手席にもたれ掛かっている優美の頭を、撫でた。目をつむっていた優美が、ゆっくりとこちらを向いた。少しだけ微笑んだけれど、疲れが滲んでいる。

「よく頑張ったな。」

社長の前でも、毅然とした態度を崩さなかった。その強い気持ちに、俺はただ感嘆していたけど・・、実際はものすごく張り詰めていたんだ。

「・・ううん、輝と堂本さんが、守ってくれたから。社長が、許してくれたんだよ。」

「いや、俺としてはあんなにあっさり認めるなんて思ってなかったし・・、お前の強い気持ちが、伝わったんだとおもう。」

「そうなのかな・・。」

「そうだよ。」

首を傾げる優美の頭を、優しく撫でた。

すると。

「輝・・。」

「ん?」

返事をすると、優美が、潤んだ目を俺に向けた。
その表情に、ドキッとする。

「抱きしめてほしい・・。」

優美・・??

普段そんなことは言わねえのに・・。どうしたんだ?

だけど素直なのが嬉しくて、いつもより狭い車の中、出来る限り優美を抱きしめた。
優美の小さな手が、背中に回る。

抱きしめると、止まらない。
キスしたくなる。

「ゆ」

優美、と言いかけたが、遮られた。

「ちょっと・・不安になった。」

「は?」

不安?

「輝・・本当に冷たくて・・、わかってるけど・・、演技だって、わかってるけど・・、なんか、悲しくて・・。前までは、平気だったのに・・・。」

優美の声が、弱々しく、車内にこだまする。

「・・いつから、こんなに欲張りになっちゃったんだろ・・・。」

最後のそれは、掻き消えそうなくらい、小さな声だった。


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