恋人はトップアイドル

姉と弟 SIDE 輝

「--、ではこれで、取材終了します。お時間頂き、ありがとうございました。」

「いえ。」

インタビュアーに軽く会釈をして、俺は取材部屋を出て、楽屋に向かった。
今日は1日、取材デーだ。俺にとっちゃ、一番辛い日でもある。

「お帰りー。」

楽屋へ戻ると、寝転がりながら本を読んでいた優太が手をあげた。
軽く返事をして、畳に座る。と同時に優太が起き上がった。
今日は珍しく2人部屋だ。

「次は俺だよね。」

「ああ、そうだな。」

「何聞かれた?」

「普段通りだな。」

「そっかー。」

妙な沈黙があった。
優太が黙るなんて珍しいな・・。
そう思いながら、俺は携帯を開いた。

「ねえ。」

すると優太がまた口を開く。
携帯に目をやりながら、「何だよ。」と答えた。

「この間さあ、新宿近くにいたんだ。」

「ああ。」

「そしたらね、」

「ああ。」

「小夜姉に会ったよ。」

-----、

「は?」

俺は訳が分からず、優太を見た。優太は気まずそうに目を逸らす。

「新宿に小夜がいるはずねえだろ。あいつは関西にもう帰ってるはずだぞ。」

「・・え、輝、小夜姉に会ったの?」

しまった、と思った。
困惑からか、余計なことを口走った。

「まあ、それはいい。で?見間違いじゃねえのか?」

「んなわけないよ!俺が小夜姉を見間違うはずない!」

その言葉に、遠いようで近い記憶が呼び起こされる。
そうか、こいつはまだ---。

「・・別に、見ただけならよかったんだ。旅行かな、って思うくらいで。・・でも小夜姉・・・、働いてる、ぽかった。」

---働いてる?

なんで小夜が。
小夜は結婚して、今関西にいるはずだ。その場所は俺ですら知らない。

でもこの間、英恵さんの旅館で--。待て、何で小夜はあそこにいた?英恵さんの旅館は山梨だ。旅行って感じじゃなかった。

あれから1週間も経ってない。
なのに、新宿にいる?働いてる?小夜が?

「お前、いつ見た。」

「え?」

「いつ見たんだよ、それ。」


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